美白剤アルブチンについて

シミは加齢とともに増えていきます。特に仕事などで日常的に日光紫外線を浴びてきた人は同年齢の人よりシミが増え日光老化と呼ばれます。シミは老化による上皮のターンオーバーの遅れやメラニン色素細胞(メラノサイト)の機能異常に関係しているため、何気なく人の顔のシミを見ると自然と老けていると感じる老化の兆候の一つです。今回は美白化粧品に使わている『アルブチン』に焦点をあてて医学論文を参照しながらエイジングケアの観点から安全性を考察してみたいと思います。

アルブチンとは

  • アルブチンは小麦、ナシ、コーヒー玉ねぎ、お茶やワインに自然に含まれる天然成分[1]。
  • アルブチンはベアベリー(ウワウルシ)に含まれる[2]。
  • アルブチンはハイドロキノンにグルコースを結合させたハイドロキノン誘導体である[1]。

アルブチンは人工合成素材ではなく植物など天然に存在する成分です。コケモモやナシ、ベアベリーに豊富に含まれており水溶性分画に抽出されます。アルブチンの分子構造はハイドロキノンにグルコースをくっつけた『ハイドロキノン誘導体』です。

アルブチンの安全性について

シミの原因でもあるメラニン色素は紫外線(UV)を吸収して皮膚の深いところまでUVが到達しないよう老化を防ぐ役割があります。そのため美白剤で安全上重要なのは使用を中止したときに再度メラノサイトがメラニン色素を生合成してくれるかどうかです。安全な美白化粧品に求められる要件はシミを薄くしてくれる効果を得ながらもメラノサイトのDNAには影響を与えないことで白く抜ける『白斑』にならずにメラニン色素だけを抑制してくれなければなりません。メラノサイトや幹細胞のDNAに傷がつくことでメラニン色素が産生されなくなると白斑の原因になります。有名なカネボウの『ロドデノール白斑事件』は生体内で細胞毒性の高い分子に変わったためメラノサイトがアポトーシスを起こしたりDNAに傷がついてメラノサイト幹細胞も機能に異常をきたしたりきたしたり死滅して白斑になったと考えられます。

ハイドロキノンの白斑リスク

  • ハイドロキノンは活性酸素を発生させて細胞膜酸化からのDNAダメージがあるため発がん性がある[1]。
  • ハイドロキノンはメラノサイトが神経堤細胞から分化する初期段階とメラニン色素を放出するようになる後期の細胞分化を阻害する[6]。
  • ハイドロキノンは活性酸素(ROS)を発生させメラノサイトのDNAを壊し永久的な障害を与える[7]。
  • ハイドロキノンはベンゼンの代謝産物であり肝臓と腎臓に毒性がある[8]。
  • ハイドロキノンは肝臓と膵臓毒性がある[9]。

このように医療機関でシミ消しに使われるハイドロキノンは強い細胞毒性をもっているため刺激も強く活性酸素を発生し細胞のDNAにダメージを与えます。

アルブチンの美白作用

  • アルブチンは経口摂取すると胃の強酸性条件で容易に加水分解されハイドロキノンに変わる[1]。
  • αアルブチンは顔への塗布はクリームで2%までの濃度、ボディーへの塗布はローションで0.5%までの濃度は安全である[3]。
  • βアルブチンは顔への塗布はクリームで7%までの濃度なら安全である[4]。
  • αアルブチンとβアルブチンは水と有機溶媒の両方で安定性が高い。しかし加水分解条件が強いとハイドロキノンが発生した[5]。
  • アルブチンはメラノサイトの細胞分化には影響を与えずチロシナーゼの発現だけを阻害した[6]。

アルブチンはハイドロキノン化合物ではありますがハイドロキノンとは異なる性質をもっていて比較的細胞毒性は低いとされています。アルブチンはビタミンC(アスコルビン酸)などの美白剤同様に『チロシナーゼ』を阻害してメラノサイトから作られるメラニン色素が黒くなるのを防止する効果があります。

ビタミンCの美白作用について

ビタミンC(アスコルビン酸)も昔からよく知られたチロシナーゼを阻害する美白剤で、しかもハイドロキノンと違い細胞が受けたDNAダメージを修復する作用があるためビタミンE誘導体とともに紫外線対策にも使われます。さらにビタミンCは真皮のコラーゲン繊維を増やしハリを与える作用も持っているためエイジングケアに使われています。ちなみに皮膚に塗布するならビタミンC誘導体でないと皮膚が逆に酸化されて老化してしまいますのでご注意を。

その他のハイドロキノン誘導体

  • アルブチンのグルコース側鎖の水酸基を水素に置換した合成ハイドロキノン誘導体であるデオキシアルブチンはメラノサイトの生存に対する実験では95%生存率はハイドロキノンより4倍の濃度が必要だった[10]。
  • 臨床試験では、デオキシアルブチンは、ハイドロキノンよりも統計的に有意に、あらかじめ日焼けした皮膚の退色を促進した[10]。
  • デオキシアルブチンを除去すると、チロシナーゼ活性およびメラニン含量が5日以内に元に戻りメラニン色素の可逆性を示しており、デオキシアルブチンが潜在的に安全で、効果的で可逆的なチロシナーゼ阻害剤であることを示している[10]。
  • デオキシアルブチンはハイドロキノンの様に活性酸素を発生させメラノサイトのアポトーシスを引き起こさずチロシナーゼ阻害とメラニン形成を阻害する[11]。
  • デオキシアルブチンは熱で分解されやすい。温度が上がると時間とともに加水分解されハイドロキノンが増えていく[10]。

活性酸素の発生による細胞毒性があるハイドロキノン化合物としてはアルブチンは比較的安全な化合物ですが、人工合成のハイドロキノン誘導体であるデオキシアルブチンはさらに安全性が高いという実験結果があります。しかしデオキシアルブチンは熱に不安定で室温(25度)でもどんどん加水分解されてハイドロキノンが増えていきますので普通に塗ると活性酸素で肌が老化していくと考えられます。

【参考文献】

  1. New High-performance Liquid Chromatography-DAD Method for Analytical Determination of Arbutin and Hydroquinone in Rat Plasma. Gallo FR et al., Indian J Pharm Sci. 2015 Sep-Oct;77(5):530-5.

  2. Opinion of the Scientific Committee on Consumer safety (SCCS)–Opinion on the safety of the use of α-arbutin in cosmetic products. Sccs, Degen GH, Regul Toxicol Pharmacol. 2016 Feb;74:75-6. doi: 10.1016/j.yrtph.2015.11.008. Epub 2015 Dec 2.

  3. Comparative studies on the chemical and enzymatic stability of alpha- and beta-arbutin. Avonto C et al., Int J Cosmet Sci. 2016 Apr;38(2):187-93. doi: 10.1111/ics.12275. Epub 2015 Oct 7.

  4. Analysis of the effects of hydroquinone and arbutin on the differentiation of melanocytes. Inoue Y et al., Biol Pharm Bull. 2013;36(11):1722-30.

  5. The molecular mechanisms of liver and islets of Langerhans toxicity by benzene and its metabolite hydroquinone in vivo and in vitro. Bahadar H et al., Toxicol Mech Methods. 2015;25(8):628-36. 

  6. The molecular mechanisms of liver and islets of Langerhans toxicity by benzene and its metabolite hydroquinone in vivo and in vitro. Bahadar H et al., Toxicol Mech Methods. 2015;25(8):628-36. 

  7. DeoxyArbutin and its derivatives inhibit tyrosinase activity and melanin synthesis without inducing reactive oxygen species or apoptosis. Chawla S et al., J Drugs Dermatol. 2012 Oct;11(10):e28-34.

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