健康な肌の人でも合成界面活性剤で洗顔していたり冬季の乾燥する時期には角質バリア機能が弱まり老化した肌や敏感肌に似たかゆみや痛みといった症状が出ます[1]。敏感肌の人は乾燥する季節だけでなく平常時でも角質層のバリア機能が低下していますので、一年中保湿する必要があるのですが敏感肌ゆえ配合成分に気を付けなければなりません。この記事では敏感肌の人が保湿をするときに気を付ける化粧品成分を医学論文を参照しながら考察していきます。
敏感肌の症状と皮膚の状態~なぜ敏感肌になるのか
敏感肌は暑さや寒さ、大気中を浮遊してる排気微粒子、日用品や化粧品に含まれるさまざまな成分など普通の肌では平気なはずの多くの物質に対してかゆみや痛みなどの皮膚刺激を感じる状態です。敏感肌症状は全身であり得ますが顔で刺激を感じる人が多いことが知られています。敏感肌の人の数は意外に多く、日本を含むアジアでは約50%の人がこのような敏感肌です[2]。敏感肌は不明な点も多く健常な肌の持ち主でも起こりますし当然アトピーなど皮膚バリア機能が低下している人にも起こります。
一方、敏感肌を引き起こす仕組みもある程度わかってきていて、ある報告ではトウガラシの辛み成分『カプサイシン』が上皮細胞膜にある『TRPV1』という敏感肌と似た症状を引き起こす受容体のスイッチを入れることが報告されています。シワを改善する効果があるレチノイド(ビタミンA)もカプサイシンや敏感肌と同じかゆみ神経を刺激していることが報告されています[3][4]ので、敏感肌の人がエイジングケアで美容液や化粧品を使いたいならビタミンA誘導体配合の化粧品は避けるべきです。また、老化した肌やニキビでもかゆみや痛みを感じることが多いのも敏感肌と同じように感覚神経が過敏になっているからです[3]。このあと述べる合成防腐剤のフェノキシエタノールも痒みなどの敏感肌似た症状を引き起こしますが、実験でTRPV1をブロックしたところ敏感肌症状が治まったと報告されている[5]ため、フェノキシエタノールやパラベンなどの合成防腐剤は敏感肌の人は避けた方が無難でしょう。
敏感肌用の刺激の少ない保湿液の条件
乳化剤(特に合成界面活性剤)フリー
このように敏感肌の皮膚は刺激を感じる感覚神経が過敏になっているだけでなく角質のバリア機能も弱くなっていますので敏感肌の皮膚は同時に乾燥肌対策も必要です。皮膚バリアが弱っていることから敏感肌用の保湿液は乳化剤(特に合成界面活性剤)で乳化されていない保湿液でないとさらに角質バリア機能が低下してさまざまな成分が浸透して刺激になってしまうため、乳化剤で乳化された乳液やクリーム(エマルジョン)タイプの保湿液は避けるべきです。
合成防腐剤フリー
先ほども述べたようにパラベンやフェノキシエタノールは化粧品成分の中でもアレルギーを引き起こしやすい部類の成分であるため合成防腐剤無添加の化粧品を使うようにしましょう。現在はパラベンなどの合成防腐剤を使用せず乳酸菌などの善玉菌が生み出す天然の防腐剤『バクテリオシン』を使用した化粧品も売られています。
また、パラベンなどの合成防腐剤は黄色ブドウ球菌などの皮膚に常在している細菌が自身のDNAを変異させて薬剤耐性菌の発生や角質層から排除されない能力の獲得などにより皮膚の免疫力を落とす可能性があります。黄色ブドウ球菌が繁殖してしまうと肌荒れなどの炎症と皮膚バリア機能のさらなる低下を引き起こすことになるため敏感肌症状を悪化することになります。その点バクテリオシンは即時に殺菌するため黄色ブドウ球菌にDNAを変異させる暇を与えないため耐性菌を生みにくい防腐剤とされていますので敏感肌にもやさしい防腐剤と言えます。
皮膚の保湿成分と同じ成分でできた保湿液を選ぶ
パラベンなどの合成防腐剤フリーで肌と同じ保湿成分のワックスエステルや角質のNMF(天然保湿因子)でできた保湿剤があります。どちらの成分も本来肌にある成分ですので敏感肌の方の保湿剤としても安心安全です。
【参考文献】