化粧品は皮膚から本当に浸透するの?

皮膚は毒や薬品が体内に入ってこないように守っているバリアの役割がありますが、本当に皮膚からは分子が浸透しないのでしょうか?結論からいうと化粧品成分や薬品でも皮膚から浸透するものがあります。実際、発がん性の高い成分が皮膚から浸透して死亡事故を起こした例もあり、印刷会社でインクを落とすために有機溶剤(ジクロロメタン、ジクロロプロパン)を使用して20代でも胆管癌で亡くなっていく[1]という痛ましい事故が起きています。この事件で問題になった『有機溶剤』とは簡単に言うと脂溶性の成分を溶かすことができる液体のことです。身近にある例ではウォータープルーフのマスカラは水には溶けませんがオイルには溶けますよね。マニキュアも水には溶けず除去液に溶けるためこの除去液は有機溶剤です。最近人気の電子タバコも有機溶剤にフレーバーやニコチンを溶かしています。皮膚はどちらかというと水をはじく性質があるため脂溶性の成分で分子量が小さくなるほど顔にマスクだけして吸入を防いでも手などに付着すると皮膚吸収されます。先ほど述べた印刷会社が使用しているジクロロメタンやジクロロプロパンは分子量が小さく脂溶性ですので皮膚から浸透して吸収されていたのです。

低分子量と親油性の化粧品成分は皮膚から浸透しやすい

同様に身近な美容液や化粧水の成分にも皮膚吸収するものがたくさんあります。日本では化粧品はすべて成分名を記載しなければならないので容器や箱にはどんな成分が入っているかだれでも見ることができます。実際に今お使いの化粧水でも皮膚吸収する成分は何か探してみると面白いと思います。分子量の目安としては500程度より小さいほど皮膚吸収しやすくなります[2]。

例えばコラーゲン入りの化粧水や美容液が売られていますがこれは皮膚吸収するでしょうか?分子量は10万程度、低分子コラーゲンでも3000程度なので皮膚吸収しないで皮膚の上に塗布されている状態になります。それではコラーゲンを作ってくれる作用を持つビタミンC誘導体はどうでしょうか?水にも油にも溶けるビタミンC誘導体『APPS(アプレシエ)』の分子量は560でアスタキサンチンの597と比べても小さいですので皮膚吸収されます。さらに『幹細胞由来エキス』配合の化粧品はどうでしょう?幹細胞が分泌するタンパク質は分子量が数千レベルですのであまり浸透しないと考えられます。

このように分子量を目安にすると皮膚から吸収されやすいのが500程度ですが、大気汚染物質や日焼け止めなどに含まれている微粒子はナノ化され小さくなるほど皮膚から浸透しやすくなります。

毛穴からは成分が浸透しやすい

近年、水溶性の物質でも毛穴から体内に入り込むことが確認されています[3]。カフェインは分子量約194で水溶性の物質ですが毛穴から容易に浸透し血中で検出されます。毛穴を塞ぐと浸透しにくくなりますがそれでも分子量が小さいこともあり遅れて血中で検出されたと報告されています。

余談ですがお風呂に入るとふやけるのは水分を皮膚吸収したからです。毛穴からも浸透しますし、お風呂のように体内と湯船の浸透圧の差でも皮膚吸収します。基本的には雨に濡れたとか手洗い程度では皮膚は水をはじくようにできています。

また、皮膚バリア機能が低下していると通常よりも多種の物質が皮膚から入り込むことは想像に難くありません。乾燥肌敏感肌、アトピーといった方の肌は皮膚に細かいヒビが入っていたり角質が十分に分化していなかったり溶け出していたりします。日常のスキンケアで皮膚バリアを壊す行為と言えば合成界面活性剤入りのクレンジングやシャンプーを使ったり熱いお湯のシャワーで洗い流すことでしょう。

乳化された化粧品は浸透しやすい

以前茶のしずくという石鹸で小麦アレルギーになったという事件がありました。小麦加水分解タンパクは大きな分子で通常は皮膚からは浸透しないと考えられます。ですが洗剤や乳液、クリームなどに配合されている乳化剤とともに使用すると皮膚のバリア機能が低下しますので一緒に配合されている成分が浸透しやすくなるのです。この茶のしずく事件から分かるのは、洗顔剤やシャンプーのような乳化剤(特に合成界面活性剤)でできた洗剤やエマルジョン化粧品はシンプルでないと逆に肌を老化させるリスクがあると言ってよいでしょう。

まとめると、皮膚は角質バリア機構で外的刺激から守られているが吸収するものがある。その条件は分子量が小さいこと、脂溶性であること。水溶性の物質も分子量が小さかったりすると効率が悪いが浸透する。毛穴は皮膚から浸透する経路となっている。また洗剤やクレンジング剤に含まれる乳化剤とともに多くの成分が配合されていると大きめの分子でも皮膚から浸透する。化粧品は必ず全成分が書かれているので自分で調べてみることも勉強になる。

【参考文献】

  1. 印刷業に従事し塩素系有機溶剤に曝露の既往がある 労災認定された胆管癌の 1 例 藤吉俊尚 他
  2. ナノ粒子の皮膚浸透性と安全性 木村恵理子 他

  3. The role of hair follicles in the percutaneous absorption of caffeine. Otberg N et al., Br J Clin Pharmacol. 2008 Apr;65(4):488-92. Epub 2007 Dec 7.

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