ビタミンA(レチノール・レチノイド)のアンチエイジング作用について

ビタミンA(レチノール)など医学的にシワを改善する美容成分がさまざまなアンチエイジング化粧品に配合されています。例えばビタミンAの他にも『ビタミンC誘導体』はシワを改善する作用を持つ成分です。今回は皮膚のシワやハリの回復に効果があるビタミンAのほうについて医学論文を参照しながら考察してみたいと思います。

レチノイド(ビタミンA誘導体の総称)のシワを減らす効果について

レチノイドとは

ビタミンAは一般にレチノールと呼ばれ脂溶性で分子量が小さいため皮膚から入っていきます。ビタミンAは細胞の核内の受容体と結合し効果を発揮するのですがビタミンAにはビタミンA誘導体やアルデヒド型などたくさんあるためすべてひっくるめてビタミンAの受容体と結合する物質を総称して『レチノイド』と呼んでいます[4]。レチノイドの受容体は核内にありRARとRXRの2つあることが知られています。

基本的なレチノイドであるレチノールは、そのまま皮膚に塗布しても光や空気で分解や酸化され不安定な成分です。そのためビタミンAの前駆体(ベータカロテン)を利用したりビタミンA誘導体を作ったりすることで化粧品やサプリに利用できないかと考えるのです。現在は天然から人工のものまで様々なレチノイドやレチノイド様物質がありその効果や安全性(特に皮膚刺激性などの副作用の強さ)にも違いがあります。

なぜレチノイドはシワを改善するの?

紫外線などで年齢以上に増えたシワが改善するためには皮膚のボリュームを増やして減らさないことができればシワは減りハリが出てきます。肌のボリュームを増やすということは、上皮細胞を増殖させて表皮の厚みを増すことや真皮のコラーゲン繊維やグルコサミノグリカン等の細胞外マトリックスを増やすことでハリを与えるということです。ボリュームを減らさないということは紫外線などでMMPなどのコラーゲン繊維分解酵素を出さないようにすることです。レチノイドにはこれらの肌のボリュームを増やす作用があるためシワを改善しハリを与えるのです。

レチノイドは『レチノイン酸』に代謝され、核内受容体のレチノイン酸受容体(RAR)に結合して細胞増殖や細胞分化を促進し、共役二重結合で活性酸素の発生を抑えてMMP(コラーゲン分解酵素)の抑制効果を発揮します[1][2]。ですのでビタミンAの本体はこのレチノイン酸と考えることも可能です。

またレチノイドは細胞増殖作用があるため上皮のターンオーバーを速めメラニン色素を垢として排出することで美白化粧品に配合されることもあります。

レチナールのシワ改善効果について

レチナールはレチンアルデヒドとも呼ばれます。角質細胞中ではレチノールとレチニルエステル(保存形態)の形でレチノイドが存在していますが、レチナールはレチノールからレチノイン酸に角質内で代謝される際の中間代謝産物です。この代謝は角質細胞によってコントロールされているため他のレチノイン酸などと比べて刺激が弱く安全性が高い理由になっています[1]。

ビタミンA(レチノール)はニキビ治療にも使われる

ビタミンAはニキビ対策にも使われる成分[5]ですが以下に述べるように刺激が強いのでただでさえ皮膚バリア機能が低下して敏感になっているニキビ肌に使う際は刺激に注意してください。

レチノイドの副作用

灼熱感などの刺激

このようにレチノイドは肌にハリを与える成分ですが刺激が強く継続的な使用が難しい人も多いことで有名です。レチノイドの中には皮膚に塗布すると灼熱感などの刺激が強いものがあり『トレチノイン』や『レチノイン酸』は特に刺激が強いレチノイドです。一方、刺激が弱いレチノイドには『レチナール(レチンアルデヒド)』や『酢酸レチニル』、『プロピオン酸レチニル』、および『パルミチン酸レチニル』などのビタミンA誘導体、レチノール(ビタミンAアルコール)がありますが、刺激が弱くても臨床的に効果がなければ塗ってもシワが消えないため、メリットとデメリットを天秤にかける必要があります。

トレチノインは強力な作用をもっていますが刺激が強く一般のアンチエイジング化粧品には配合しにくい成分です。また、ビタミンAのアルコール型であるレチノールは化学的に不安定であるためこれも化粧品には配合しにくいと言えます[1]。一方、ビタミンAのアルデヒドであるレチナールは刺激が弱く、抗シワ効果もレチノイン酸と同等の効果を持っています。レチナールは強力なシワ改善作用があり0.05%濃度の配合でも深いシワから浅いシワまで改善する効果が報告されています[3]。

これらビタミンA誘導体の灼熱感などの刺激は敏感肌に近い感覚です。レチノールなどのビタミンA誘導体は敏感肌の症状を引き起こす上皮の細胞膜にある『TRPV1』という受容体と関連があることが知られています。

このビタミンAと似たような肌のアンチエイジング効果を発揮すると報告されている植物ハーブエキスに『ビデンスピローサ(コシロノセンダングサ)エキス』があります。ビデンスピローサエキスは核内受容体のRXRの方に結合してハリや美白などの効果を発揮しますが、灼熱感やかゆみなどの副作用も軽減されているため継続して使いやすいエイジングケア化粧品に配合されています。

光感作による炎症

皮膚刺激以外のレチノイド塗布による副作用として『光感作』というレチノイド塗布初期に日光(紫外線)に敏感になり炎症が起こりやすくなるという副作用があります[1]。ですのでレチノイド化粧品や皮膚科でレチノイド治療を受けたときは数か月は日傘やフェイスガードなど物理的に紫外線をカットして出かけましょう。数か月するとこの光感作は落ち着いてきます[1]。

【参考文献 】

  1. Proposed mechanisms of action for retinoid derivatives in the treatment of skin aging. Sorg O et al., J Cosmet Dermatol. 2005 Dec;4(4):237-44.

  2. Cosmeceuticals: the evidence behind the retinoids. Babamiri K et al., Aesthet Surg J. 2010 Jan;30(1):74-7. doi: 10.1177/1090820X09360704.

  3.  レチノイドによる自己免疫疾患の治療 深澤弘志 他 – ‎2006

  4. Topical retinoids for acne. Yeh L et al., Semin Cutan Med Surg. 2016 Jun;35(2):50-6. doi: 10.12788/j.sder.2016.024.

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