幹細胞と肌のエイジング(老化)について

近年、毛穴からわずか1~2mm程度の浅い部位に皮膚や髪の毛を細胞分裂して増やす『幹細胞』が固まって存在している部位(バルジ領域)があることが判明し皮膚につける化粧品や髪の毛を洗うシャンプーがエイジング(老化)の観点から問題になっています。そこで今回は肌のエイジングはどのように幹細胞と関係しているのか?エイジングケアと呼べる化粧品とはどのような条件が必要なのかについて医学論文とともに考察してみたいと思います。

皮膚の幹細胞はどこにあるの?

肌のハリを保ち新陳代謝の要となる幹細胞はどこにあるのでしょう?下の図を見ていただくと分かるように、一つは先ほど述べた毛穴から浅い部位(バルジ領域)に幹細胞が存在しています[1]。ここには髪の毛を増やすだけでなくメラニン色素を放出するメラノサイトの幹細胞も一緒に存在しています。このバルジ領域の幹細胞は毛穴と毛穴を結ぶ肌の再生にも関わっていますので髪の毛だけに分化する幹細胞ではなく肌の細胞にも分化する細胞です。

皮膚幹細胞が存在する部位 [1] Victor W. Wong et al.

もう一つは上皮と真皮の境目である基底膜状に乗っかっている幹細胞でいわゆる28日周期で起こる皮膚のターンオーバーを起こしている幹細胞です。あとは真皮中にもコラーゲン繊維を作っている繊維芽細胞の幹細胞もいますし、皮下にも脂肪細胞とともに幹細胞が存在しています。上の図にはその他にも皮脂に分化する細胞や髪の毛に分化する毛母細胞も示されていますがすべて分裂能をもっています。

幹細胞が幹細胞であるためには周囲のニッチ(微小環境)と接している必要がある

幹細胞が分裂することで肌のハリを維持したり古い角質が剥がれても新しい角質ができて保湿機能を維持できるのですが、幹細胞が分裂できる能力を持ち続けるためにはある条件が必要であることが分かっています。それは幹細胞がニッチと呼ばれるコラーゲン繊維などの周辺構造物から離れず接触しているという条件です[2]。ニッチが壊れたり、ニッチから遠ざかってしまうと幹細胞として分裂する能力が無くなってしまいます。例えばバルジ領域の幹細胞のニッチの構成要素の一つに17型コラーゲンという繊維[3]がありますが、MMPなどでコラーゲン繊維が分解されニッチが破壊されていくとバルジ領域の幹細胞は垢として角質から剥がれ落ちて幹細胞の数が減っていくことも知られています。

幹細胞が老化すると肌の老化が加速する

老化の主な原因は活性酸素による細胞の劣化なのですから、肌のエイジングケアとは幹細胞に活性酸素を不要に増やさないことと言うこともできます。

幹細胞の老化、すなわちもはや分裂しなくなってしまった細胞のことを老化細胞と呼びますが、加齢に伴う自然な老化だけでなくタバコや紫外線合成界面活性剤などの化粧品に含まれる毒物大気汚染物質などさまざまな原因で幹細胞に活性酸素ストレスを与えてしまいます。

周囲の細胞の老化を加速するSASP現象

細胞のDNAが活性酸素によって傷つけられると一時的に細胞分裂を停止して修復しようとしますが、そのまま永久に停止することもあることが判明しています。分裂しなくなった幹細胞は老化細胞そのものですので、これが年齢以外に起こる活性酸素による肌の老化です。細胞分裂を停止した幹細胞はプログラムされた細胞死であるアポトーシスへの耐性を得る[4]ため分裂をやめた後も長い間生き続けます。しかも炎症性サイトカインを分泌したりMMPなどのプロテアーゼを増やしてコラーゲン繊維を切っていったりするため先ほど解説したニッチの破壊や周りの若い細胞まで炎症と活性酸素で老化を加速させてしまう困った能力(SASP)を獲得してしまいます。

まとめると、肌のハリを維持するためには皮膚にボリュームが必要なため、細胞を増やす幹細胞に活性酸素ダメージを与えて分裂を停止させないことがエイジングケアに必要だということです。活性酸素を増やすものは意外と身近に溢れており合成界面活性剤でできた洗剤やシャンプー、クリームや乳液などの乳化化粧品(エマルジョン)、メイク落としに使うクレンジング剤をはじめ外出すれば紫外線や排気ガス、煙草の煙などの大気汚染粒子で活性酸素が増えるしかない環境にいますので肌のエイジングケアをしたい場合にはこれらに気をつける必要があります。おすすめはビタミンC誘導体ビタミンE誘導体を塗ることです。

【参考文献】

  1. Stem Cell Niches for Skin Regeneration. Victor W. Wong et al., Int J Biomater. 2012; 2012: 926059.
  2. Adhesion in the stem cell niche: biological roles and regulation. Chen S et al., Development. 2013 Jan 15;140(2):255-65. doi: 10.1242/dev.083139.

  3. Hair follicle stem cells provide a functional niche for melanocyte stem cells. Tanimura S et al., Cell Stem Cell. 2011 Feb 4;8(2):177-87. doi: 10.1016/j.stem.2010.11.029.

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