ビタミンCやビタミンEは体内で抗酸化剤として働いて体の老化を抑えてくれます。それは皮膚においても同様ですが純粋なビタミンEはビタミンCと同様、直接皮膚に塗ると大気中の酸素で酸化されやすくそれ自体が活性酸素発生源になって逆に肌を老化してしまいます。そのためエイジングケア化粧品には純粋なビタミンE(トコフェロール)ではなく『ビタミンE誘導体』の形で配合されます。今回はビタミンE誘導体の老化抑制効果を医学論文を参照しながら考察していきたいと思います。
ビタミンE摂取推奨量
- ほとんどの人は、推奨される1日量を服用しても副作用を経験しない[1]。
- 高用量は吐き気、下痢、胃痙攣、疲労、衰弱、頭痛、視力障害、発疹、挫傷、および出血を引き起こすことがある[1]。
- ビタミンEは脂溶性のビタミンであるため、毎日の必要量を超える投与は体内に蓄積し、高ビタミン症を起こす。ビタミンEを毎日100mg以上1年以上服用している成人は、 ビタミンK代謝の低下を引き起こし、出血傾向をもたらすことが示されている[1]。
ビタミンB群やビタミンCは水溶性ですので過剰に摂取しても尿に出てくるのですが、ビタミンEは脂溶性ですので過剰な分は体内に蓄積していきます。摂取しすぎると下痢などの軽度の副作用から出血しやすくなったりもするので脂溶性ビタミンは用量に気を付けないといけません。
上限あるいは推奨摂取量がありますがどのくらい摂取すればよいかはその人がどのくらいビタミンEを消費するかによって異なります。目安として日本において厚生労働省は以下の様に4mg~19mgまで摂取することを勧めています[2]ので参考にしてください。
ライフステージ | 摂取推奨量 |
生後6カ月 | 4 mg (6 IU) |
幼児7-12カ月 | 5 mg (7.5 IU) |
小児1-3歳 | 6 mg (9 IU) |
小児4-8歳 | 7 mg (10.4 IU) |
小児9-13歳 | 11 mg (16.4 IU) |
10歳代14-18歳 | 15 mg (22.4 IU) |
成人 | 15 mg (22.4 IU) |
妊娠している女性(10歳代も含む) | 15 mg (22.4 IU) |
授乳中の女性(10歳代も含む) | 19 mg (28.4 IU) |
厚労省HPより抜粋
ビタミンE誘導体化粧品の肌への効果
日焼け止め効果
- ビタミンE誘導体は紫外線(UV)による皮膚の炎症を抑制する[3]。
- トコフェリルリン酸ナトリウム(ビタミンE誘導体)はUVBによる炎症、過酸化物による角化細胞のプロスタグランジンを抑制して炎症を緩和する[4]。
- ビタミンEは細胞内に浸透し紫外線によるDNAダメージを軽減する[11]。
ビタミンC誘導体と同様にビタミンE誘導体にはさまざまな種類があります。エイジングケア化粧品によく配合されるビタミンE誘導体の一つ『トコフェリルリン酸ナトリウム(TPNa)』は皮膚浸透性が高く体内のフォスファターゼによって徐々にビタミンEを放出するタイプのビタミンE誘導体です。TPNaのようなビタミンE誘導体を肌に塗ると外出の際に紫外線や大気汚染物質である排気ガスや排煙中に含まれる微粒子による活性酸素や炎症対策として老化を予防できます。
紫外線(UV)は顔の老化にさまざま関わっていて活性酸素によるDNAダメージ、あるいはMMPによるコラーゲン繊維の断裂、メラニン色素沈着(シミ)など顔の老化の主な原因になっています。UVAやUVBなど一年中紫外線が降り注いでいますので、普段使いの美容液としてビタミンE誘導体ならびにビタミンC誘導体配合の化粧水や美容液の塗布は顔の老化防止に有効だと考えています。特にビタミンEは紫外線吸収作用があり皮膚に到達するUV量を減らす作用とともにビタミンEが細胞内に取り込まれDNAダメージも減らすため日焼け止めとしてビタミンE誘導体を肌に塗ることは日々のエイジングケアにも有効な成分です。
活性酸素除去による抗老化作用
- ビタミンEはUVを吸収し活性酸素を消すことで日焼け止め効果がある[8]。
- ビタミンE誘導体は紫外線による活性酸素、炎症、メラニン産生を抑制する[5]。
- ビタミンE誘導体は紫外線による炎症を抑制する[7]。
活性酸素はDNAダメージや炎症を発生させ老化の主な原因ですのでビタミンEの抗酸化作用は顔のアンチエイジングに有効です。
ニキビを緩和する作用
ビタミンEは油に溶ける性質を持っているためニキビ肌のような皮脂が多い肌に浸透しやすいのです。TPNaなどの空気中で安定性の高いビタミンE誘導体入り美容液を使うと皮膚内でビタミンEが放出され、上に述べたような抗酸化作用や抗炎症作用でニキビの改善に有効です。
美白作用
- ビタミンEはチロシナーゼを阻害しメラニン細胞がメラニン色素を産生するのを抑制する[1]。
- メラニン細胞の細胞膜の酸化を防ぎ細胞内のグルタチオン量を増やす[1]。
- ビタミンE誘導体は色素沈着を抑制する[6]。
ビタミンEは紫外線対策として多くの有効な働きをもっています。例えば、日焼けといえばシミです。ビタミンEはメラニンを作る細胞(メラノサイト)がメラニン色素を作るのを防いだり、DNAにダメージが及んで過剰にメラニン色素を作り続けたりするのを予防してくれますのでシミ対策としてもビタミンE誘導体の肌への塗布は有効です。
保湿作用
トコフェリルリン酸ナトリウム(TPNa)を皮膚に塗布するとパルミトイルトランスフェラーゼの遺伝子発現を増強しセラミドの量を増やして肌の保湿能を増強します[10]。
ビタミンE誘導体を皮膚に塗ると細胞間脂質であるセラミドの合成促進作用があるため乾燥の季節や乾燥肌の方にも有効な成分だと言えます。このセラミドなどの細胞間脂質は加齢とともに減っていきますので、40代以上の方はエイジングケアとして老化による乾燥予防にもビタミンE誘導体は効果があると考えられます。
たるみ、シワ予防
ビタミンEは紫外線(UV)によるDNAダメージを軽減します[9]。
紫外線を浴びることでMMPが発生しコラーゲン繊維が減っていきますし、UVや活性酸素によって繊維芽細胞のDNAに傷がついて劣化するとコラーゲン繊維合成も減るためシワやたるみの原因になります。また、細胞分裂で肌の細胞を増やす幹細胞のDNAに傷がついて永久に細胞分裂を停止するとますます老化した肌になっていきます。ビタミンEは紫外線を吸収し、活性酸素を消去する能力があるため皮膚内の日焼け止めと言えます。ですので顔を年齢以上に紫外線で光老化させないための紫外線対策として使い心地のよいビタミンE誘導体配合の美容液は便利なアイテムだと思います。
【参考文献】
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Vitamin E in dermatology. Keen MA et al., Indian Dermatol Online J. 2016 Jul-Aug;7(4):311-5.
- ビタミンEの推奨摂取量 厚生労働省HP
- Topical application of a novel, hydrophilic gamma-tocopherol derivative reduces photo-inflammation in mice skin. Yoshida E et al., J Invest Dermatol. 2006 Jul;126(7):1633-40. Epub 2006 Mar 16.
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