コンビニで手軽に買える洗顔剤やシャンプー、洗濯洗剤、食器洗い洗剤など至るところに界面活性剤(乳化剤)それも合成界面活性剤が使われています。トップページにも書いたように日本は欧米と比べて化粧品材料の規制が緩いため、この記事では合成界面活性剤がなぜ肌のエイジングケアには向かない成分なのかを医学論文を参照しながら考察していきたいと思います。
まず結論から言うと、安価で簡単に油汚れを落としたい人は合成界面活性剤でできた化粧品や洗剤を使うといいと思います。しかしエイジングケアの観点からはなるべく合成界面活性剤は生活から減らした方が綺麗な肌になるということです。合成界面活性剤が肌の老化を加速する原因には①持続的な界面活性作用による皮膚バリア機能の低下と②細胞毒性があり活性酸素を増やすの大きく2つがあります。
目次
よく使われている合成界面活性剤
シャンプーやクレンジング剤、洗濯洗剤などに使われている合成界面活性剤の一覧はとてつもなく長い物になります。合成界面活性剤は皮膚や洋服・シャツに残り年月をかけて細胞を弱らせ細胞破壊、細胞の老化に導いていくのです[2]。つまり合成界面活性剤には細胞毒性があることが昔からわかっているのです[3]。先ほども述べたように皮膚のバリアを低下させて乾燥肌を人工的に作るためのネズミの実験ではSLS(ラウリル硫酸ナトリウム)などの合成界面活性剤が昔から使用されていたぐらい安定して皮膚バリア機能を壊すことで有名です。以下に良く日用品に配合されている合成界面活性剤を挙げておきます。
合成界面活性剤は数多く合成されて身の周りに使われている
まず合成界面活性剤の『4級アンモニウム』ですがよく化粧品や洗剤に使われるものとしてクオタニウム-15、ベタイン、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化メチルベンゼトニウムがあります[5]。この中にはアメリカ食品医薬品局(FDA)から皮膚の免疫に影響があるとして使用を禁止されているものも含まれています(塩化メチルベンゼトニウム)。
次にアルキルグリコシドとしてドデシルマルトシドがあります[4]。化粧品にも配合されていますが危険だと思いますので知識がある人は避けるでしょうね。日本は基本的に有害指定成分の規制がないため自分で勉強して化粧品や洗剤を選ぶしかないのです。
よく化粧品に使用されている合成界面活性剤としてSLSつまりラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)があります。これは他の合成界面活性剤より毒性が低いのですが細胞内に活性酸素を増やしIl-1という炎症性サイトカインを増やすため皮膚細胞の機能が低下して肌荒れが起こります[7]。このようにラウリル硫酸ナトリウムのように毒性が低い合成界面活性剤であっても肌荒れの原因となるのです。
乳化剤(特に合成界面活性剤)は皮膚の保湿成分を溶かして皮膚バリア機能を低下させる
医薬品では薬剤の浸透性を上げるために水と油を混ぜる作用がある合成界面活性剤をはじめとした乳化剤を使用しています[1]。同様に化粧品でも乳液やクリームといった乳化化粧品(エマルジョン)も乳化されていますので一緒に配合されている成分が浸透しやすくなっています。しかし『茶のしずく事件』のように加水分解コムギタンパクなど一緒に配合されている成分がアレルギーに感作してしまうと大変なことになります。皮膚から浸透して免疫細胞のランゲルハンス細胞に捕捉されアレルギーになってしまうことがあるわけです。ですので洗剤はシンプルなものを使うことをおすすめします。
このように合成界面活性剤などの乳化剤は皮膚のセラミドなどからできている細胞間脂質を溶かし皮膚バリアを壊して[6]薬物や成分を皮膚の奥に浸透させやすくする作用を持っています。毎日使っていると角質バリア機能が低下していき年齢とともに肌の乾燥がひどくなり『しわ』や『くすみ』が人より目だっていきます。そもそもラウリル硫酸ナトリウム(SLS)などの合成界面活性剤は乾燥肌を人工的に作るマウスの実験で昔から使用されてきた試薬で皮膚バリア機能を壊すために使われてきたのですが一般人にはあまり知られていません。
合成界面活性剤でできた洗剤で毎日顔や体を洗うことによる老化が怖いのは生活習慣病と同じで加速した老化現象がすぐに現れないことです。医薬品の場合、もし乾燥がひどくなりシワが増えても治したい肌の症状があるなら乳化されたクリームなどを使っても治す方が優先順位が高いですし一時的な使用である場合が多いので界面活性剤による肌への害は少ないと思いますが、毎日のスキンケアで乳化剤製品を使いつづけると保湿を担い免疫組織でもある皮膚の角質バリア機能が低下し、皮膚内の水分が蒸発し乾燥して見た目もくすんでみえますし、黄色ブドウ球菌が繁殖して肌荒れの原因となるため、肌のエイジング(老化)が加速する原因になっています。
さらに合成界面活性剤は石けんと異なり水道水中のミネラルで界面活性作用が不活化されないため界面活性作用が持続しますし、後でも述べますが皮膚から深く浸透し生きた細胞にも毒性を発揮して活性酸素を増やし肌のエイジング(老化)を加速します。したがって、日々のメイクや酸化皮脂などの油汚れを簡単に安価に落とすだけなら合成界面活性剤でできたクレンジング液や洗顔フォームで洗えばいいでしょうが、年齢以上に老化しないために肌のエイジングケアを考えた場合は肌や頭皮の皮膚バリアを守るために天然の界面活性剤『石けん』を使うことです。石けんのいいところは水道水中のミネラルと反応して界面活性作用を失うため汚れだけを洗い流せるという古くて新しいエイジングケアのための洗剤なのです。
合成界面活性剤は浸透して生きた皮膚細胞にも毒性がある
合成界面活性剤でできた化粧品や洗剤は皮膚バリアを壊すだけでなく深く浸透していきます。例えば、妊娠したネズミにアルコール硫酸系合成界面活性剤(AS・ラウリル硫酸ナトリウムなど)や直鎖アルキルベンゼンスルホン酸系合成界面活性剤(LAS)を腹部に塗った実験では、受精卵にまで到達し細胞毒性で受精卵が変形し死んでいくという報告[10]もありますが、合成界面活性剤が皮膚から浸透して細胞毒性があることはあまり世間一般には知られていません。
皮膚表面は角質細胞という死んだ細胞で覆われていますので安心だと思う人もいるかもしれません。しかし合成界面活性剤は皮膚から浸透して深さ約6mm程度も皮膚バリアを通過し体内に浸透していることも分かっています。6mmというと目じりのシワができるあたりなら優に筋層まで届く深さでしょう。そしてなにより合成界面活性剤が皮膚や髪の毛に活性酸素ダメージを与える部位となっているのが毛穴から約1.65mmのところに集まっている幹細胞の存在です。この部位は”バルジ領域”といって立毛筋が付着している部位なのですが肌と毛に分化して増やす細胞です。近年このように非常に浅いところに皮膚や髪の毛の幹細胞があることが判明したため合成界面活性剤でできた化粧品の習慣的な使用による皮膚老化や薄毛が強く懸念されています。
当然合成界面活性剤配合のシャンプーはハゲの原因となりますので育毛シャンプーと謳っているシャンプーでも合成界面活性剤が配合されていないか確認したほうがいいです。逆に抜け毛が増えたということも医学的に十分にあり得る話だからです。細胞毒性があると炎症と活性酸素が増えるため細胞のDNAに傷がつきます。幹細胞DNAに傷がつくと細胞分裂が止まり老化細胞として長く生き続けるのですが、この老化細胞はもはや普通の幹細胞が分泌する因子とは異なる炎症性の因子をまき散らし、コラーゲン繊維を溶かすMMPなどのプロテアーゼも放出するため周囲の健康な細胞まで老化することが知られています[8]。そのためどんどん肌が老化していきエイジングの負のスパイラルに入ることになると考えられます。
皮膚の幹細胞の微小環境(ニッチ)が破壊されると老ける
このようにバルジ領域にある幹細胞が合成界面活性剤で老化していくと毛穴周囲にある基底膜を貫通してる17型コラーゲンも減っていきます。17型コラーゲンは毛穴と毛穴の間の上皮の増殖に必要なものでこれが少なくなると皮膚のターンオーバーが遅くなりシミが増えくすみが生じるなど老化を促進するということになります[9]。17型コラーゲンは幹細胞のニッチ(微小環境)の構成成分で例えばバルジ領域のニッチが炎症で破壊されると幹細胞は垢として角質から剥がれ落ちていくことも知られています。つまり幹細胞が分裂能力を持つためには17型コラーゲン繊維が必要で、17型コラーゲンが炎症で破壊されると肌のエイジングが進むということになります。
まとめると合成界面活性剤は皮膚バリアを壊し保湿成分を溶かしていく作用があるだけでなく、皮膚から浸透して生きた皮膚細胞に毒性があるため活性酸素と炎症を引き起こして皮膚の老化を加速するということです。そのため合成界面活性剤を日常生活から減らすことが肌と髪の毛のエイジングケアになるということです。
【参考文献】
- Sublethal doses of surfactants induce premature senescence in normal human skin cells. Yamakami Y et al., Biosci Biotechnol Biochem. 2011;75(7):1395-8. Epub 2011 Jul 7.
- Epithelial toxicity of alkylglycoside surfactants. Vllasaliu D et al., J Pharm Sci. 2013 Jan;102(1):114-25. doi: 10.1002/jps.23340. Epub 2012 Oct 25.
- Mitochondrial dysfunction is the focus of quaternary ammonium surfactant toxicity to mammalian epithelial cells. Inácio ÂS et al., Antimicrob Agents Chemother. 2013 Jun;57(6):2631-9. doi: 10.1128/AAC.02437-12. Epub 2013 Mar 25.
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