ビタミンC誘導体は大気汚染物質による酸化から肌を守る

沿岸の都市部では排気ガスや工場の煙など大気中にも活性酸素源となり肌のエイジング(老化)を加速する微粒子や物質が多く含まれています。例えば鉄などの遷移金属の酸化物、窒素酸化物、紫外線のエネルギーにより発生する光化学オキシダントとしてオゾンがありますし、日光紫外線自体も肌を酸化させ老化を加速させます。今回は大気汚染による活性酸素から肌のエイジングを予防して肌を守るビタミンCならびにビタミンC誘導体について医学論文を参照しながら考察してみたいと思います。

大気汚染物質による肌の老化

先ほども述べましたが空気中に含まれる酸化鉄や排気ガス由来の窒素酸化物などの微粒子、常に浴びている紫外線は肌に活性酸素を増やす要因です[1]。これらが顔の皮脂やメイクなどのオイル成分に付着して酸化脂肪酸に変えていくため皮膚に炎症と活性酸素を増やし肌の老化を加速することになるのです。

そこで炎症や活性酸素を抑える抗酸化成分が含まれた化粧品を塗って外出することが大気汚染によるエイジング対策に有効と考えられます。有名な抗酸化剤である『ビタミンC(アスコルビン酸)』や『ビタミンE(トコフェロール)』は大気汚染物質から肌を守り老化対策となります[2][3]。しかし純粋なビタミンCはこれら大気汚染物質によって容易に酸化されてそれ自身が逆に活性酸素源になっていきますので化粧品で使う場合には安定性の高いビタミンC誘導体やビタミンE誘導体の形で肌に塗らないと逆に肌を老化してしまうのです。よく広告でレモンやキュウリを輪切りにして直接目や顔に張り付けている女性の写真がありますが、空気中の酸素ですぐに酸化されて逆にレモン自身が活性酸素発生源となってしまいますのでエイジングケアの方法としてはよくないです。

肌に塗るなら純粋なビタミンCではなくビタミンC誘導体

このように空気や紫外線で不安定な純粋なビタミンCは容易に酸化されてしまい逆に酸化剤となって肌のエイジングを加速するため化粧品成分としてそのまま皮膚に塗布するのには向かないのです。しかも純粋なビタミンCを直接塗ると刺激性もあります。そのため日本では1960年代から化粧品の中に『ビタミンC誘導体』というビタミンCの化学構造で水酸基(OH基)をリン酸などほかの分子で置き換えたものを化粧品成分として応用してきました。

ビタミンCは6個の炭素で構成された分子で順に1~6位まで番号が振られています。特に2位の炭素にくっついている水酸基は酸化されやすいためここをリン酸などに置換することで安定化させるビタミンC誘導体が多いです。

ビタミンCの化学式 File:L-Ascorbic acid.svg Author: Yikrazuul

皮膚はどちらかというと油に溶ける脂溶性の物質のほうが浸透しやすくビタミンCは水溶性で肌に浸透しにくいため、さらに6位の炭素にパルミチン酸などの脂溶性の分子をくっつけて肌に浸透しやすい性質をもたせた『APPS(アプレシエ)』などのビタミンC誘導体もあります。ビタミンC誘導体は浸透性の向上と酸化されにくさを改善したビタミンCです。ビタミンCを化粧品で使うなら肌は外気にさらされているため酸素や環境ストレスによって酸化されにくいビタミンC誘導体を使うべきです。

ビタミンCやビタミンC誘導体で肌のエイジングケア

DNAダメージを軽減してくれる

ビタミンC誘導体には様々な種類がありますがどれも酸化されにくく、皮膚に浸透して体内で徐々にビタミンCを放出していくという特徴があります[4]。ですので日中紫外線を浴びている間にビタミンCを少しづつ出してくれて抗酸化作用が持続するためアンチエイジング化粧品には有望な成分です。

抗酸化力以外にもビタミンCは細胞の老化に関係していることが報告されています。一般的に紫外線による細胞のDNAにダメージが起こると細胞はダメージの程度によって修復可能かアポトーシス(細胞の自殺)かを選択します。ビタミンCはこのDNA修復かアポトーシスかを制御する遺伝子発現に関係しています[4][5]が、ビタミンC誘導体はビタミンCを徐々に放出しビタミンC誘導体自身が抗酸化力が強いため紫外線によるアポトーシスや壊死などの細胞毒性を軽減してくれるのです[4]。活性酸素や紫外線によるDNAダメージが皮膚の幹細胞に起こると分裂が永久に停止する場合がありそのまま完全な老化細胞になることが知られています。こうなると炎症やコラーゲン繊維と弾性繊維を減らすMMPなどの分解酵素が増える(SASP現象)ため周囲の若い細胞も老化してしまいます。

サーチュイン遺伝子の活性を補助する

紫外線のような活性酸素ダメージがあるとサーチュイン遺伝子(SIR1)という長寿遺伝子の発現がダメージを受けた細胞で減っていくのですがビタミンC誘導体が存在するとSIR1発現の低下を抑制し細胞の老化を抑制する効果もあります[6]。

コラーゲン繊維/弾性繊維を増やす

活性酸素や紫外線は肌の真皮内線維芽細胞のDNAダメージやコラーゲン線維を劣化させ、MMPというコラーゲン繊維を分解する物質も放出しますが、ビタミンCは線維芽細胞の増殖とコラーゲン繊維の合成を促進して肌にハリを与えたり[7]コラーゲン繊維を分解する酵素『MMP』を抑制します[10]し、『弾性繊維』も増やし[8]しわやたるみを減らしハリを与えます

ビタミンC誘導体は美白剤

紫外線や炎症があるとメラニン細胞がメラニン色素を合成しますが、ビタミンC誘導体はメラニン合成を抑制します[9]。シミの原因がメラニン色素ですが、メラニン色素が黒くなるためにはメラノサイト内でチロシナーゼという酵素が活性化する必要があります。ビタミンCはこのチロシナーゼの働きを抑えるのでビタミンC誘導体は美白剤として昔から使われていす。

【参考文献】

  1. Environmental pollutants and skin cancer. Baudouin C et al., Cell Biol Toxicol. 2002;18(5):341-8.

  2. The protective role of antioxidants in the defence against ROS/RNS-mediated environmental pollution. Poljšak B et al., Oxid Med Cell Longev. 2014;2014:671539. doi: 10.1155/2014/671539. Epub 2014 Jul 20.

  3. Vitamin C Compound Mixtures Prevent Ozone-Induced Oxidative Damage in Human Keratinocytes as Initial Assessment of Pollution Protection. Valacchi G et al., PLoS One. 2015 Aug 13;10(8):e0131097. doi: 10.1371/journal.pone.0131097. eCollection 2015.

  4. Protection of free radical-induced cytotoxicity by 2-O-α-D-glucopyranosyl-L-ascorbic acid in human dermal fibroblasts. Hanada Y et al., Biosci Biotechnol Biochem. 2014;78(2):301-6. doi: 10.1080/09168451.2014.882756. Epub 2014 May 2.

  5. Protection of free radical-induced cytotoxicity by 2-O-α-D-glucopyranosyl-L-ascorbic acid in human dermal fibroblasts. Hanada Y et al., Biosci Biotechnol Biochem. 2014;78(2):301-6. doi: 10.1080/09168451.2014.882756. Epub 2014 May 2.

  6. Collagen synthesis in human skin fibroblasts is stimulated by a stable form of ascorbate, 2-O-alpha-D-glucopyranosyl-L-ascorbic acid. Yamamoto I et al., J Nutr. 1992 Apr;122(4):871-7.

  7. Effect of a novel ascorbic derivative, disodium isostearyl 2-O-L-ascorbyl phosphate on human dermal fibroblasts: increased collagen synthesis and inhibition of MMP-1. Shibayama H et al., Biol Pharm Bull. 2008 Apr;31(4):563-8.

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