細菌が防腐剤で薬剤耐性を持つと肌のエイジングケアに影響する?

感染症に使われる抗生剤の長期投与や日用品に含まれるパラベンやフェノキシエタノールなどの耐性菌を生みやすい合成防腐剤にさらされるほど薬剤耐性菌を生み出します[4]。医療の現場で今までは抗生剤を投与する場合には連続で飲み切ってもらうことが常識でしたが、抗生剤や抗菌剤を摂取したり接触する頻度が少ないほど耐性菌が少ないことが最近分かってきたのです。そのため症状がおさまったら抗生物質の服用をその時点で中止するというのが現在では正しい抗生剤の使い方に考えが変わってきています。

皮膚にいる黄色ブドウ球菌などの悪玉常在菌がDNAを変化させると薬剤耐性だけでなく皮膚や口腔、腸管の免疫低下や海洋生物の生殖機能など環境の問題にも及ぶため、化粧品や食品にも使える人体ならびに環境に優しい耐性菌やDNAの変化をさせにくい抗菌剤や防腐剤の開発が急務となっているのです。

一方の皮膚の常在菌である『表皮ブドウ球菌』は皮脂や汗を代謝し酸性の環境をつくって黄色ブドウ球菌やカビの繁殖を防いでいる善玉菌です。皮膚細胞と表皮ブドウ球菌には免疫機能の共生関係があり表皮ブドウ球菌が皮膚の細胞に信号を送って免疫物質を分泌させる仕組みがあります。

今回は皮膚にとって良くない悪玉菌である黄色ブドウ球菌(S.aureus)が防腐剤や抗生剤により自らのDNAを変化させると肌のエイジング(老化)にどのような影響があるのか興味がわいたので医学論文を参照しながら考察してみたいと思います。

黄色ブドウ球菌は健康な人の皮膚にもいる

悪玉菌の黄色ブドウ球菌は健常な人の皮膚にも存在し約2割の人に住み着いています[3]。アトピーの患者さんの皮膚の約9割にこの黄色ブドウ球菌が存在していることが確認されていることから分かるように、黄色ブドウ球菌は皮膚の免疫機能を介して皮膚の健康を悪化させる菌であることが考えられます。健康な皮膚の角質層は死んだ細胞で角質バリア機能を果たしていますが皮膚の主要な免疫機能のセンサーでもあり、角質層は黄色ブドウ球菌などの悪玉菌を感知する機能を持っていることが報告されています[1]。

この皮膚免疫を担う角質バリアを溶かして破壊するスキンケアといえば合成界面活性剤で洗顔やメイク落としをしたり、さらに40度などの熱いお湯でシャワーを浴びるスキンケアでしょう。このような合成界面活性剤によるクレンジングやシャンプーは油汚れを効率的に落とす反面、肌や頭皮の角質バリアを壊すことで皮膚免疫機能を低下させ黄色ブドウ球菌を繁殖させるのです。

皮膚では防腐剤・抗菌剤による耐性菌が発生している

こういったスーパーやドラッグストアで買えるような大量製造された日用品には必ずといっていいほどパラベンやフェノキシエタノールなどの合成防腐剤で防腐され何年も保存できるように作られています。このような製品をスキンケアに使うことで実は私たちの皮膚では毎日のように薬剤耐性菌やDNAが変異した異常な細菌が生み出されています。

スキンケア製品には防腐剤が必要な水溶性の化粧品がありますので何かで防腐しなければ半年も持たず腐ります。そこで耐性菌を生みにくい抗菌剤として乳酸菌などが生み出す天然の防腐剤である『バクテリオシン』の化粧品への応用がすでにされています。バクテリオシンは細菌の膜に触れた瞬間に膜に穴を開けて瞬時に殺菌するためパラベンやフェノキシエタノールなどとくらべて耐性菌を生み出しにくいのです。

アメリカでも防腐抗菌剤による薬剤耐性菌や変異細菌の増加が問題となり2016年9月に日本の厚生労働省にあたるアメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は抗菌石鹸で洗った時と抗菌でない石鹸で洗った時とで細菌数に有意差が認められないと指摘された19種類の抗菌剤は薬剤耐性菌を増加させ逆に免疫に害を及ぼす可能性があると発表しました。その結果、アメリカはトリクロサン、トリクロカルバンなどの抗菌剤を含んだ石鹸や化粧品をこれら19の成分が入った薬用石鹸の販売を禁止しました[5]。この発表があってから抗菌ハンドソープなどの化粧品類が日本でもスーパーの棚から忽然と姿を消しました。

薬剤耐性黄色ブドウ球菌は角質細胞内にとどまる能力を得る

さて、黄色ブドウ球菌が防腐剤や抗生剤に接触してDNAを変異させ薬剤耐性を得ると肌のエイジングケアにはどのような悪い面があるのでしょうか?まず、黄色ブドウ球菌が薬剤耐性を得ると皮膚のターンオーバーに悪影響をあたえ上皮の角質への分化を抑制して健康な角質を作れなくします[3]。さらにMRSAのような薬剤耐性をもつ変異した黄色ブドウ球菌は角質から排除されることなく角質細胞の中にとどまる能力を持つようになり皮膚へのダメージを継続する可能性が指摘されています[2]。つまりこれまでのスキンケア製品では合成界面活性剤によって角質バリアを溶かすだけでなくパラベンなどの合成防腐剤の多用で黄色ブドウ球菌が薬剤耐性や形質変異を獲得することで肌が汚くなり免疫機能が低下する可能性があるということになります。

【参考文献】

  1. Keratinocytes as sensors and central players in the immune defense against Staphylococcus aureus in the skin. Bitschar K et al., J Dermatol Sci. 2017 Jun 10. pii: S0923-1811(17)30707-7. doi: 10.1016/j.jdermsci.2017.06.003. [Epub ahead of print]

  2. Methicillin-resistant Staphylococcus aureus adaptation to human keratinocytes. Soong G et al., MBio. 2015 Apr 21;6(2). pii: e00289-15. doi: 10.1128/mBio.00289-15.

  3. Staphylococcus aureus inhibits terminal differentiation of normal human keratinocytes by stimulating interleukin-6 secretion. Son ED et al., J Dermatol Sci. 2014 Apr;74(1):64-71. doi: 10.1016/j.jdermsci.2013.12.004. Epub 2013 Dec 17.

  4. Efficacy of triclosan as an antimicrobial hand soap and its potential impact on antimicrobial resistance: a focused review. Giuliano CA et al., Pharmacotherapy. 2015 Mar;35(3):328-36. doi: 10.1002/phar.1553.

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