近赤外線は実は肌の老化対策だった？！

最近、紫外線だけでなく近赤外線や可視光線も肌を老化するといったことが言われていますが近赤外線が肌を老化させるかどうか医学論文を参照して検証していきたいと思います。

近赤外線は肌の老化を加速するって本当？
近赤外線でＵＶを浴びる前の老化対策の準備ができる
近赤外線は肌の老化回復のための光治療に使われている
- シミの治療
- シワの治療

近赤外線は肌の老化を加速するって本当？

まず近赤外線はどのような波長なのか紫外線や可視光線との波長の違いを確認しましょう。下の図で左に行くほど波長が短く右に行くほど波長が長くなります。一般には波長が長いほど皮膚に深く浸透します。

近赤外線（IRA）Daniel Barolet et al., [1]

ですので紫外線のＵＶＣはオゾン層でほとんど吸収され地表にすら到達しないのです。その代わり波長が短い方が細胞へのダメージが大きくなるため細胞が死んだりガン化する老化促進作用が強くなります。

近赤外線は上図に示すように近赤外線はNIR（Near Infrared Radiation）と呼ばれ赤色の可視光線に近い波長をもっています。

近赤外線でＵＶを浴びる前の老化対策の準備ができる

紫外線は肌の老化を加速する原因ですが、一方の近赤外線は紫外線による肌のエイジング（老化）対策になるのです[1]。紫外線を浴びる前に近赤外線を浴びておくと紫外線による細胞ダメージに対する準備をするようになります。このように毒性があるものでも少量であれば抵抗性を高めその後の本格的なダメージから守ってくれるという機能が人間には本来備わっていて『ホルミーシス』と呼ばれています。

さらに近赤外線は紫外線で受けたダメージの修復にもかかわっていることが分かりました[1]。つまり、近赤外線は朝と夕方の日光に多く含まれますので朝に日光を浴びて日中の紫外線による老化をやわらげ、夕方に日中受けた紫外線ダメージを回復するという流れになります。これは人間の進化の過程を考えてもとても自然なことです。

ではなぜ近赤外線が肌の老化を促進するといった情報が出回ったのでしょう？それは実験でコラーゲン繊維を分解するＭＭＰの発生など肌の老化を加速するような報告が以前あったからです[1]。けれども、それらの実験は日光に含まれるような近赤外線レベルではありえない量で実験されていたのです[1]。

ただ、大量の近赤外線は人工的に作ることができるため近赤外線は使い方次第で肌の老化を起こすこともありえますので注意が必要です。

近赤外線は肌の老化回復のための光治療に使われている

実際、近赤外線は肌の老化を改善するために若返りの治療にも使われています。この波長はＩＰＬ（Intense Pulsed Light）という光治療で肌の若返り治療に用いられています。

シミの治療

シミは肌の老化の兆候のひとつです。ＩＰＬは近赤外線の波長を制限してシミの原因であるメラニン色素やメラノサイトに最も熱が発生するように調整して使うことができます。

近赤外線の熱でメラニン色素やメラノサイトが熱分解したり壊死すると皮膚のターンオーバーで次第にシミが垢としてなくなっていきますが、ＩＰＬによるシミ取り治療は濃いシミや深いところにあるシミはなかなか改善が難しいことがあります[2]。治療の期間は3〜4週間ごとの反復治療（典型的には3〜6回）が一般的です[2]。

シワの治療

シワも老化とともに増えてきますが、ＩＰＬは真皮のコラーゲン繊維やヒアルロン酸など年齢とともに減ってしまう『細胞外マトリックス』を増やしてシワを改善する効果があります[2]。

真皮が近赤外線で温められるとコラーゲン繊維や弾性繊維を作っている『線維芽細胞』を刺激し、コラーゲン繊維などの細胞外マトリックスを増加させてハリを与える効果があります[2]。このハリを回復するための近赤外線によるＩＰＬ治療は100〜300μm程度表皮の厚みが増し、角栓の減少、キメの改善、変性した弾性線維の割合の低下など肌のアンチエイジング効果があります[2]。ＩＰＬによる若返り治療で最も効果が出やすいのは目や口唇周囲部のしわです。口の周りや目の周りは細かく浅いしわが多く、より深いしわよりも一般的に良好に応答するからです。またＩＰＬは脱毛でも応用され『フラッシュ脱毛』と呼ばれています。

【参考文献】

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