茶のしずくという石鹸でアレルギーが発症したと聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?その原因となったアレルギー成分が『加水分解コムギタンパク』だったのですが、加水分解コムギタンパクは分子量が大きいにもかかわらず皮膚吸収され皮膚の免疫細胞(ランゲルハンス樹状細胞)に感知されてアレルギー感作してしまったのです。これは茶のしずくの界面活性作用(乳化作用)で皮膚バリア機能を低下させているため多少大きな分子でも入り込んでいくためです。この原理は市販のクリームや乳液といった乳化化粧品(エマルジョン)の浸透原理に使われています。しかしその代償は皮膚バリア機能の破壊と乾燥、敏感肌など加齢肌の加速です。これらの症状は老化した皮膚に特徴的で、特にラウリル硫酸~やココイル~などの代表的な合成界面活性剤は水道水中のミネラルで不活化されないため洗っても界面活性作用を持続させ、しかも皮膚から浸透していき生きた細胞に持続的に活性酸素と炎症を惹起し続けるため肌のエイジング(老化)を加速するのです。
シャンプーや洗顔フォームに不要な成分が入っていることの健康リスク
アトピーや乾燥肌、敏感肌の皮膚はバリア機能が弱体化していますのでさまざまな異物が皮膚から浸透しやすくなっており、皮膚の異物管理をしている免疫細胞のランゲルハンス細胞に影響を与えています。食物アレルギーは以前は口から食べて腸管でのIgE2型アレルギーが原因と考えられてきましたが、皮膚バリア機能が弱っている人は皮膚からさまざまな物質が浸透しやすくなっていますので化粧品成分のアレルゲンに感作して皮膚から食物アレルギーを起こすことが明らかになっています[1][2]。先ほどの茶のしずく事件も界面活性剤(乳化剤)に植物や穀物などの成分を配合していましたので食物アレルギーを発症しました。このように洗剤にコムギや柿などなんだかんだいろいろ配合することは異物がランゲルハンス細胞に捕捉されてアレルギーを引き起こすリスクが高まるということを学んでください。
皮膚から腸~食物アレルギーが発症するまで
下の図は少し難しいですが皮膚-腸管食物アレルギー経路のシェーマになります。

皮膚から食物アレルギーが発症する経路 Wang YH. [1]
共通するのがIL-33からのIL-9という炎症性サイトカインの流れです。皮膚からはその他にTSLP(thymic stromal lymphopoietin)によっても腸管のIL-9につながっています[1]。ある報告ではIgE食物アレルギーでアナフィラキシーなどの重度のアレルギー症状を発症する人は乳児の時に皮膚からアレルゲンが経皮吸収されランゲルハンス細胞に認識されてアレルギー感作して重症化すると述べています[1]。
皮膚から吸収された食物アレルゲンによる食物アレルギーの発症
ですので茶のしずくでIgEアレルギーを発症した人はパンやうどん、ラーメンなどに対する食物アレルギーが発症する体になったことになります。近年は皮膚-腸-脳連関と呼ばれており皮膚から脳や腸管への影響もこれからますます医学的に新事実がでてくると考えられますので安易に界面活性剤でできた化粧品やエマルジョンにさまざまな成分を配合し顔や体を洗うのは綺麗な肌のためだけでなく食物アレルギーにならないために気を付けなければなりません。
まとめると、食物アレルゲンは皮膚バリアが弱っている人、例えばアトピーや乾燥肌、敏感肌の皮膚から経皮吸収されるとIgE2型食物アレルギーの原因となるということです。茶のしずくで明らかになったように界面活性剤は皮膚バリアを壊すため洗剤にいろいろ配合されてしまうとアレルギーのリスクが高くなってしまう。体を洗う洗剤はシンプルな石鹸でできた化粧品を使用することがエイジングケアの観点からおすすめです。
【参考文献】